ブラックブック
原題:ZWARTBOEK
監督:ポール・ヴァ―ホーヴェン
出演:カリス・ファン・ハウデン、トム・ホフマン、セバスチャン・コッホ、デレク・デ・リント
2006年 /オランダ=ドイツ=イギリス=ベルギー
日本公開:2007年
ストーリー
1944年9月、ナチス・ドイツ占領下のオランダ。
ユダヤ人女性歌手ラヘルは、ナチスから逃れるため一家で南部へ向かうが、何者かの策略でドイツ軍の待ち伏せによって、家族全員殺されてしまう。
難を逃れたラヘルは、レジスタンスに救われ、彼らの活動に参加。
名前をエリスに変え、髪をブロンドに染めてナチス将校ムンツェに接近するが・・・。
レビュー
「ロボコップ」「トータルリコール」等を手掛けたポール・ヴァ―ホーヴェンの監督作品。
ナチスによって家族を殺害された女性のスパイ活動を通し、人間の裏切りと欲望を描き出している。
観る前は、戦争を舞台にしたひとりの女性を描いたドラマ性が強い作品かな?と思っていましたが、この作品はじっくり見せる質の良いサスペンスものです。
時間が長い作品ですけれど、途中ダレることなく食い入って観ていたので、長さは感じませんでした。
ハリウッドも好きそうな作品なんですが、欧州が舞台なのに強引に全編英語という作品にはヘキエキしていたので、監督がオランダに戻って撮影したことは正解だと思います。
登場人物が次々出てくる序盤は混乱しそうにはなりますが、中盤からはラヘルを中心にテンポよく描かれていきます。
そして、終盤になると裏切り者がいることがわかり、真相が明らかになっていく辺りからは目が離せません。
作品はラヘルの回想というカタチになっていますが、とにかく脚本が素晴らしい。
ラヘル自身の物語としても、よくできています。
▼▼▼ネタバレ▼▼▼
単なるユダヤ女性の物語ではなく、戦争ドラマでもなく、そこへサスペンスという要素が入った作品なんですね。
戦争の悲劇さと、それと同時に人間の強欲さも描き、スパイ活動や裏切り者の存在なども入れ込んでる贅沢な作品だと思いました。
そして、映画の冒頭にテロップで表示される「1956年10月イスラエル」という意味が何気に重要です。
国家間は戦争中ですが、個人での敵と味方の曖昧さの有り様が実によく描かれています。
英軍の空爆で妻や子供を失い、戦争の犠牲者とも言える敵側ナチス将校ムンツェを愛してしまったラヘル。
一方で、レジスタンスの仲間だと思っていたひとりの男がドイツ兵と繋がっていて仲間を裏切っていたり、ユダヤ人を逃す善人なフリをして実はドイツ兵と繋がっていた老人等々。
これもまた、戦争の側面なのかもしれないと思いました。
そして、罠にかかってしまい、自分がレジスタンスの裏切り者にされてしまうラヘル。
これでもか!というくらいに災難が降りかかるラヘルですが、彼女が本当の裏切り者を追求していく辺りになると、一気に展開して目が離せなくなります。
何度も死にそうになったり、屈辱を味わったりするラヘルですが、ブラックブックによって身の潔白を証明することができたのです。
そして、そんな思い出を回想するラヘルの元に、2人の子供と夫がやってくるラスト・・・4人で仲良く家路を歩いていく後姿の締めくくりですが、ここで1956年10月イスラエルは何があったのか?ということが重要な要素になるラストです。
イスラエルがエジプトに攻め込み、第二次中東戦争が勃発した頃なんですね。
彼女を始めとするイスラエルに移住したユダヤ人とって、戦争は付きまとっていることを冒頭のテロップによってオチをつけています。
楽しそうに家路を急ぐラヘルたちに、もう次の影が忍び寄っていることを暗示させているんですね。
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